検証・日本医療の諭点
医療費地域差についての点描—都道府県別調査の分析から・その1
二木 立
1
Ryu NIKI
1
1日本福祉大学社会福祉学部
pp.356-359
発行日 1989年4月1日
Published Date 1989/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209544
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●はじめに
一昨年6月に発表された厚生省国民医療総合対策本部「中間報告」は,医療費抑制の大義名分として,医療費地域差の存在をクローズアップした.それを受けて昨年5月に成立した国民健康保険法「改正」では,「高医療費市町村の運営の安定化」のために,実績給付費が「基準給付費」の1.17倍を越える市町村は高医療費市町村の指定を受け(初年度の指定市町村は146),医療費安定化計画の策定を義務づけられた.更に,実績給付費が「基準給付費」の1.20倍を越える市町村は,「特例的な負担」を強いられることになった.
医療費の地域差の原因を実証的に検討することは,医療資源の適正利用のためにも重要である.しかし,「安定化計画」のように,医療費地域差(高低)の要因分析を「高医療費要因分析」のみに限定し,しかもそれを医療保険の診療諸率のみを用いて行うことには理論的に無理がある.現実的にも,それは医療費抑制を目的にした患者の受診抑制・病院からの追い出しを招くことになりやすい.
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