味わいエッセー 出会い
活きた英語
斎藤 隆雄
1
Takao SAITO
1
1徳島大学医学部麻酔学教室
pp.144
発行日 1989年2月1日
Published Date 1989/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209491
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耳を聾する機銃音も,遠いとルルルルルと,のどかなささやきのようである.1945年も7月になると,中学4年生の私が動員されて戦闘機(疾風)を作っていた中島飛行機宇都宮工場の上空には,毎日何度か硫黄島からのムスタング(P51)や空母からのグラマン(F6F)がやってきて機銃掃射をし,ロケット弾を発射するようになった.しかし,凹地に伏せたり壕に入れば容易に難を避けられたので,すぐに空襲ずれした中学生たちは格好の休憩時間とばかり壕の中で女学生の品さだめやらワイ談やら先生や上役の悪口やらに花を咲かせ,結構楽しむようになった.配属将校や憲兵はグラマンが出現すると逸速くどこかへ消えてしまうので,悪童どもの放言が問題にされたことは無かった.
そんなある日ムスタングに追われて飛び込んだ壕にたまたま都立中学から疎開された英語の先生が居合わせ,当時「敵性語」だった英語についてお話を承る羽目になった.
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