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検証・日本医療の論点についての補注
二木 立
pp.113
発行日 1989年2月1日
Published Date 1989/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209482
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本誌1月号の検証・日本医療の論点「わが国病院の平均在院日数はなぜ長いのか」(60-66ページ)において,職員数・老人施設定員・病床数を独立変数,平均在院日数を従属変数とする「重回帰分析」を行ったところ,職員数は平均在院日数との単相関係数の絶対値が3独立変数中最も大きいにもかかわらず,変数増加法による最終結果では,職員数の偏回帰係数のF値は0.114と2よりはるかに小さくなり,しかも偏回帰係数の符号がプラスに転じるという,一見奇妙な結果になった.これは,職員数と病床数・老人施設定員との間にそれぞれ比較的強い相関があるために,職員数と平均在院日数との関係が「抑圧」されたためと考えられる.この場合,統計数理的には職員数を除くのが妥当であり,しかもそうしたほうが自由度を調整した寄与率もかえって高くなる(3変数では0.740が2変数では0.773).
しかし,職員数が少ないと集中的な治療が行えず,その結果,平均在院日数が長くなる(およびその逆の)関係は,臨床上も病院経営学上も広く知られている.この点を考慮して,筆者は職員数を含めた3独立変数全体により,平均在院日教の変動の74%が「決定」(「説明」)されると解釈した.
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