特集 インフォームド・コンセント
英米におけるインフォームド・コンセントの動向
丸山 英二
1
,
新美 育文
2
Eiji MARUYAMA
1
,
Ikufumi NIIMI
2
1神戸大学法学部
2明治大学法学部
pp.596-600
発行日 1988年7月1日
Published Date 1988/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209328
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アメリカにおけるインフォームド・コンセントの動き
法的要件の歴史と現状
インフォームド・コンセント(説明を受けた上での同意)の要件は,アメリカにおいて,法的な要件として発展してきた.後述するように,インフォームド・コンセントの要件が目指す医師‐患者関係が法的手段のみによって実現され得るものでないことはよく指摘される通りであるが,インフォームド・コンセントの現在の姿はその法的由来に規定されているところが大きいので,その法原則の歴史と現状の説明から話を始めたい.
アメリカでは今世紀の初めになって,治療(厳密にはより広く検査等も含む医療行為),なかでも手術など侵襲度の大きい処置を患者に行うためには,医師は,医療契約とは別に治療に対する同意を患者から得なければならず,患者の同意なくして治療を行えば損害賠償責任が課される,という原則が確立された.しかしこの時代には,同意の対象についての患者の理解度や医師の説明義務などはまだ問題にされていなかった.医師は,同意を得る際にその対象となる処置の名前(及びそれに関するごく簡単な説明)を与えるだけでよかったのである.
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