医療におけるQOL 現代患者論序説・1
QOLの理念と原則
ニノミヤ アキイエ・ヘンリー
1
Akiie Henry, Rev.
1
1神戸聖隷福祉事業団
pp.779-783
発行日 1987年9月1日
Published Date 1987/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209141
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はじめに
最近「QOL (Quality of Life)」と言う言葉を耳にする機会が多くなってきた.特に1984年11月,東京で開催された「ガン患者のクォリティ・オブ・ライフに関するワークショップ」から,多くの医療関係者がこの言葉に興味を持ち始めてきた.この言葉は「生命の質」あるいは「生活の質」というように日本語に翻訳すると意味が狭くなってしまうので,原語のまま「QOL」として使っている.ガン患者のQOLは「Longevity of Life(人生の長命)」,「Ex-tension of Life(人生の延命)」からくる生物学的な生命の長さからみる「Quantity of Life(生命の量・人生の量)」に対する概念として用いられている.
明治時代の初めは"人生50年"と言われていたが,現在では平均寿命も80歳台に突入し,"人生80年"とまで呼べるようになってきた.その原因としては医療技術の発達が大いに貢献してきた.ただし,人生を延長することだけが先走りしてしまい,延長されたその30年間をどのように生活(Life)するか,医療関係者は多くの場合無関心であったのではないだろうか.最近の国立公衆衛生院の発表によると,75歳以上の自殺者数は人口10万人当たり日本は65.3であり,北米の19,スウェーデンの26に比較して著しく高い.
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