建築と設備 第17回
病院の空調を考える
中原 信生
1
Nobuo NAKAHARA
1
1名古屋大学工学部建築学科
pp.773-778
発行日 1987年9月1日
Published Date 1987/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209140
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
筆者は空調を専門としているが,どちらかと言うと冷房が嫌いなほうである.冷房は空調の中で大きな役割を占めるので,私の立場がなくならないように,冷房は嫌いだが空調は好き,と理屈をつける.とは言え,酷暑の季節の冷房,暑い戸外から強烈に冷やされた室内に入った時の快感は,いかにそれがコールドショックという,循環器系に悪い影響を与えると言ってもこたえられない.しかし冷えすぎた新幹線に乗ると乗車後十数分にして冷不快を感じ始める.そこで一つの教訓が得られる.
一方向の過度の不快状況にある時,対極方向の過度の不快刺激は快感を与えるが,徐々に定常に達するに従い,本来の不快に至る.この時の瞬時的快適が,医学的に見て保健的であるかどうかは,体験者の健康状況によるのであろう.元来,空調では,この種の快感は非健康的であり,コールドショックと称して断じて避けるべきものとされてきたが,大衆はそれで満足せず,一言でこの冷房は効かない,と評価する.この種の評価は文化レベルが低いほど多く起こるようで,これは冷房が一つのステータスシンボルとなるからで空調の本質論とは無関係である.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.