特集 病院におけるボランティア・ワーク
地域医療におけるボランティア—その意味と実際
鎌田 實
1,2
Minoru KAMATA
1,2
1諏訪中央病院
2全国ボランティア研究集会全国運営委員会
pp.123-126
発行日 1987年2月1日
Published Date 1987/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208996
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病院は死にかけている
現在,医療を取り巻く環境は厳しさを増して来ており,今後はますます経済的論理を最優先した医療機関の整理・再編成が進むものと思われます.また,総医療費抑制策の下で,病院・診療所経営の悪化は全国的に広がりつつあり,そのためすべての医療従事者の労働条件の悪化が顕在化して来ています.このような外的な厳しさに加えて,病院の内部では,この十数年来の近代化の嵐の中で,医療従事者の心が荒み始めているように思います.私の心が病み,働く仲間の心が傷つき始め,「病院」は死にかけています.最近,私は,次のようなことを自らに問います.『病気だけを小さな視野で見過ぎていないか.病気を抱えているトータルな人間を見失っていないか.患者を支えている家族を常に焦点に入れているか.患者の生活する地域のことを考えているか.そして患者をこのように分断するだけではなく,自分らの「病院」を近代化し,進歩させ,専門化させるなかで,自らを働く仲間から分断してはいないか.その上,個としての自分をも分断し,自らのアイデンティティを失っていないか.』
このように,今,病院は,ひとり孤立して存在する臨死患者のように,夜の闇の中で蠢いています.
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