患者からみた病院
医学の進歩の喜びと残酷さ
村山 糸子
Itoko MURAYAMA
pp.599
発行日 1986年7月1日
Published Date 1986/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208875
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「後1週間くらいでしょうね.」主治医の言葉を聞きながら残念という気持ちと,心の片隅でホッとする気持ちが交差していたことを覚えている.1年3か月の闘病生活日誌3冊を読み返しながら思い出している.
自営業であった主人が倒れたのは昭和59年11月8日,その日は主人の誕生日でもあった.「ちょっと練習してから帰る」と言ったままゴルフの練習中に倒れてしまった.すぐに救急病院に飛んで行ったが,入院の手続きをしながらも手足のふるえが止まらず,瞬間的に主人の病状,商売のこと等,断片的に様々な思いがはせていくのが分かった.「診断の結果,脳動脈瘤破裂でくも膜下出血を起こしており,非常に危険である.手術しても回復の見込みは1%もないがどうしますか」と脳外科の若い先生に言われた時,自分一人で決断することができなかった.子供たち,主人の兄弟と相談の末1%にかけてみようと,その夜のうちに先生にお願いしたが,一抹の不安がよぎったのは,先生が若いこととほかに医師がほとんどいないということだった.翌日東大の助教授が応援にきて,手術が始まり,6時間くらいかかって無事手術が終わった.
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