時評
自己管理型の「在宅医療」
小野 重五郎
Jugoro ONO
pp.527
発行日 1986年6月1日
Published Date 1986/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208858
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この4月の診療報酬改定でも,在宅医療の推進は重点課題のひとつであった.自己腹膜灌流(CAPD),在宅酸素吸入療法,中心静脈栄養法の施行には厳しい施設基準が設けられていたが,これが廃止され,一般診療所でこれらの管理が可能となった.受け入れ側の調整には,まだ少し時間を要するとしても,在宅医療が広がりをもってきたことは間違いない.
在宅医療は,はじめは寝たきり老人の家庭での介護を中核とする概念であったが,昭和56年のインスリン自己注射の保険適用をきっかけとして,患者による自己管理型の医療もこのことばのなかに繰り込まれるようになった.昭和58年,老人保健法の成立以後は,同法のなかでの「在宅医療」は老人介護型を,一般保険のなかでは自己管理型の医療を表現していることは注目に値する.同じ在宅医療といっても,両者は,医療行為のあり方,患者の能動性の点で,質的に異なったものである.
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