新病院建築・97
中野胃腸病院の計画と設計
中野 貞生
1
,
西野 範夫
2
Sadao NAKANO
1
,
Norio NISHINO
2
1中野胃腸病院
2(株)田中・西野設計事務所
pp.57-62
発行日 1986年1月1日
Published Date 1986/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208749
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病院の原点にかえって
病院の移転新築に際して,私はまず病院というものの原点に立ち還ろうと考えた.Hospitalというのは語源的には「訪れる人々を手厚くもてなすところ」という意味である.中世において,ヨーロッパ各地に造られた修道院では,病める人に対して,真心をもって尽くすことが戒律とされ,修道僧に病人が出ると"Infir-maien"と呼ばれる特別な部屋に入れて手厚く看護されたと記録されている.
その頃,イエスキリストの聖地をめざす巡礼がひきもきらず,修道院はその人たちの宿となった.この巡礼を"Hospes"(外来の客),その宿所を"Hospiz"といった.このHos-pesの中で病魔におそわれた人々を手厚く看護し,健康を回復させ,再び聖地へと送り出した.ちょうど同じ頃,フランク王国の首都リヨンに,教会の管理のもとに,"Hôtel-Dieu"(神の宿の意)が誕生した.宗教活動の一つとして始まったが,病人や貧民の世話をする特定の施設としてはフランス最古のものであり,これが現代の病院の原形であるといわれている.
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