時評
医療行政のヒズミと病者の排斥
塙 正男
Masao HANAWA
pp.420
発行日 1985年5月1日
Published Date 1985/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208588
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3月下旬の新聞には,事件の判決の記事が多い.甲府の筋短縮症事件の判決では,国は責任ないということであったが,新聞論調,NHKテレビニュースでは一般人の抗議の声が満ち満ちていた.製薬会社は有責とのことであった.医師の責任については余り批難の声が上がらない.事件の性質は違うが,宇都宮病院事件の判決(「朝日新聞」3月26日夕刊)には,国が入り込む余地は全くなかったようだ.とにかく石川院長に実刑判決——見出しは「患者の人権無視—営利第一主義を断罪」と一面トップである.
昨年の本誌9月号でこの事件に触れたので,少していねいにその反響を読んでみると,日本精神病院協会副会長及び栃木県精神衛生協会のコメントは「この事件で明らかになった精神医療の課題を克服し,世の信頼と医の権威の回復に努める」,「これを機に全員が姿勢をただし,気分を一新して,精神医療に取り組んでいく」というもので,身内としてはこれしか言いようがないのがよく分かるが,こうした建て前だけを繰り返すことの無意味さは読者にはまる見えであろう.問題はちょっと違うのではないかと思って次のコメントを読む.ルモンド紙(仏)の東京支局長の話である.
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