特集 看護夜勤体制の変革
衛生学からみた夜勤・交代制勤務
松本 一弥
1
Kazuya MATSUMOTO
1
1杏林大学医学部衛生学教室
pp.408-412
発行日 1983年5月1日
Published Date 1983/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208013
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はじめに■
最近の病院における診療業務は,患者数の増加,疾病構造の複雑化,医療技術の高度化,専門化等の進行にともなって著しい変貌を遂げている.ことに,医療担当チームのなかで極めて重要な立場にある看護婦の業務内容は,その量的増加のみならず質的な変化を生じており,しかも労働基準法上の例外規定により女子でありながら夜勤を含む交代制勤務が避けられない労働条件におかれている.深夜業の問題については,深刻な看護婦不足と,特に母性保護の視点からその回数制限の必要性が叫ばれ,昭和40年のいわゆるニッパチ問題といわれる人事院判定が出された経緯がある.それ以来,これが看護婦の夜勤回数の「基準」として考慮されてきたが,いまだにこの判定を越える回数が慣行化されているのが実態である.我が国は経済大国と言われながら,保健・福祉対策への貧困性が各方面から指摘され,また最近の経済情況の悪化や財政危機の高まりのなかで医療・福祉への風あたりがますます強まろうとしている.加えて,医療・福祉の職務に対して伝統的に築かれてきた「聖職意識」や「奉仕の精神」が美徳とされる風潮がいまなお根強く残っていることも,医療・福祉労働者の保健・労働条件対策を十分推進しきれない要因の一つとなっている.ときには,この倫理性が労働条件の改善要求を抑圧するための有効な手段として悪用されることもある.
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