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ほろ苦き経験の中から
田中 熈
1
Hiromu TANAKA
1
1井上病院
pp.236-237
発行日 1983年3月1日
Published Date 1983/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207976
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二つの事例
1)昭和39年○月○日.午後7時10分前であった.まだ開院して間もない病院の夕刻,診療の終わり寸前のころ,ようやく少したて混むようになってきた外来がとぎれ,「もうどなたもいらっしゃいませんか」と言って受付のカーテンを閉めかけたとき,「ばか野郎!眼が見えないのか診察券を出しているじゃーないか」という形で寸劇は始まった.見ると閉めかけたカーテンの下に,差し込まれる形で診察券が入っており,患者さんは土木工事の現場監督然とした30歳前後の男性であった.一応謝って内科に通し,無事診察も終わり,薬を渡した後のこと,彼氏は帰りかけた.「ちょっと待って下さい」と止めかける私がいた.「先ほどのばか野郎の言葉は取り消してくれませんか.」慌てて止めに入る婦長に,「これはもう診察が終わって男同士のこと,かまわないで」と言いきっていた自分がいた.だが相手は手ごわそうな大きな体,二言三言やりとりがあった後,「もう,こんな病院に二度と来てやるものか」と言う彼氏と,「こちらのほうでもお断りです,もう来ていただかなくて結構です」と言い返していた私とがあった.1日の外来がやっと100人に近い数字に近づいてきて一人でも多く患者さんを増やしたいという時期に引き起こした事件(?)であった.それだけに「患者さんを一人減らしてしまい申しわけありません」と院長に素直に詫びる自分でもあった.
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