特集 医療施設間の連携
「地域医療計画」と施設間の連携
倉田 正一
1
Masakazu KURATA
1
1慶応義塾大学医学部病院管理学
pp.20-23
発行日 1983年1月1日
Published Date 1983/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207916
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我が国の病院はまことに自由に設立されてきた.もちろん綿密な地域分析の上で計画的に建てられたとは言えまい.経営主体は私的を中心に国立,公的,公的性格を有するものなど20種を超えている.これらがいわば乱立し,競合しているのである.この中には,国立病院の多くが昔の軍病院の引き継ぎであった例を別にしても,最初の設立目的を失っているものが多くある.貧者のために,農民のために,官公吏のために,看護婦養成のためにといった種々の設立目的は皆保険体制,公的扶助により消減したとみてよい,そしていずれの病院も「地域住民のために」互いに無関係に活動を続けているのが現状である.さて,このような現状の中で地域医療計画だ,施設間の連携だと言ってみても,お話としてはまことに結構であるが,本当にできるのか,いったい入院患者を他病院に転送したことがあるのかということになる.
悪いことに,計画と聞くと思い出されるのは昭和34年の厚生省による医療機関整備計画案である.戦後焼土の中から,すべての国民に適正な医療を受ける機会を均等に保障せんとする議が持ち上がったことは当然であった.この問題には焦点が二つあった.一つは医療費負担の問題であり,他の一つは医療機関の問題であった.前者は国民皆保険と医療扶助を進めてゆくとしても,医療機関のないところでは医療は受けられない.そこで無医地区とか医療機関の適正配置の問題が注目を集めたのである.
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