病院建設の基本問題・10
救急医療施設—地域の医療需要と施設計画(5)
荻原 正三
1
1工学院大学・建築学
pp.65-71
発行日 1969年2月1日
Published Date 1969/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203565
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以上,最近の救急医療需要の増大と質的変化が病院計画にどのような影響を与えているかについて検討してきたが,まとめると次のようになる.
(1)最近の救急医療需要は,ほぼ人口10万人あたり年間2500-3500人程度のところまで増加し,救急医療施設およびその施設網の早急な整備を必要としている.
(2)救急医療需要は都市の全域にわたって増加しているが,とりわけ大都市周辺部における増加傾向がいちじるしく,周辺部の施設整備の遅れが重大な問題となりつつある.
(3)救急医療需要の増大は,一般に考えられているような交通事故受傷者によるものだけでなく,急病,一般負傷によるものも多い.とくに近年一般医療施設の夜間,休日診療辞退が一般化する傾向にあり,救急施設にたんなる時間外の軽症患者が来院するケースがふえつつある.この傾向がすすむと本来の救急医療をさまたげる恐れもでてくる.
(4)救急医療需要は交通手段が発達し,都市に人口が集中し,都市の活動が昼夜をわかたず活発になり,従来の昼間しか機能を発揮できない一般医療体系との矛盾が激化すればするほど急速に増大しよう.したがって施設整備をかなり思いきって実施しないと常に後手にまわることになる.
(5)救急医療需要が発生する原因としては,交通事故,労働災害,運動競技,一般負傷,傷害(犯罪),自殺自損行為急病,その他(火災,水難など)および少し性格が異なるが出産が含まれる.
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