医療の周辺 生物学—最近の話題・6
生態学・行動学の視点と医学
長野 敬
1
1自治医科大学・生物学
pp.336-337
発行日 1980年4月1日
Published Date 1980/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207133
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現代生物学の発展が医療に及ぼしてきた影響は,前回まで繰り返し触れたとおり,もっぱら分析的・分子生物学的な側面を中心としていた.脳での精神機能のように,ものごとを総合的に見ざるを得ない局面でも,最もめざましい成果のいくつかは,向精神薬,神経作用ペプチドなど,個々の物質をとらえるという形で得られてきた.
しかし現在の生物学のうちに,こうした分析的・"還元主義的"なものとは対照的な方向でも,重要な展開がなされていることを見逃してはならないであろう.それは生物の個体を研究対象とするのでなしに,個体から出発して生物の世界の論理をとらえようとする方向である.これを大きく分けて標語をつければ,生態学(ecology)及び行動生物学(ethology)と呼ぶことができる.
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