特集 医療チームとしての栄養部門
栄養部門の役割と期待—栄養指導を要する疾患の急増に対応して
東島 利夫
1
,
塩川 優一
1
1順天堂大学・内科
pp.890-894
発行日 1978年11月1日
Published Date 1978/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206689
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わが国における臨床栄養に対する認識は,欧米先進国に比べ遅れていると言わざるをえない.後進国や100年前あるいは第二次大戦中および終戦直後の日本では,食物が得難く,そのためにしばしば飢餓に陥り,時には死亡することさえあり,慢性的な栄養素の欠乏症に悩まされてきた.したがって,わが国の栄養活動の主体は栄養素欠乏症の解消であり,臨床栄養も栄養素欠乏症の治療が課題であった.しかし,経済の高度成長とともに,日本人の食生活も改善され,栄養不足による疾病がほとんどみられなくなると,栄養の問題は顧みられなくなり,栄養に関する施策も,栄養学についての研究および教育も軽視されているのが現状である.
確かに栄養の改善はその他の多くの疾病の減少をもたらし,国民の平均寿命の延長の主な原動力となっている.また栄養の充足により従来貧弱であった国民の体位の改善,すなわち身長,体重の増加をもたらし,日本人の国際的ハンディキャップを克服しつつある.
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