精神病院医療の展開
精神病院における栄養部門
片山 一男
1
1昭和大学附属烏山病院栄養課
pp.1082-1085
発行日 1980年12月1日
Published Date 1980/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207337
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はじめに
精神障害者のもつ多面的ニードに対し,精神病院という医療組織が,この組織を構成するそれぞれの専門セクションの役割分担によって,直接的,間接的あるいはCo—,あるいはPara—の形をとりながら充足してゆく行為の中で,精神科栄養士の行為はどのように位置づけられるべきであろうか.精神病院における栄養部門の役割は何かを考えるとき,まずその機能としての食事供給と栄養指導の本質を明らかにしておく必要がある.戦後の食糧難時代の精神病院給食の実態を記した資料にそれを求めるまでもなく,病院の食糧調達能力,食事供給力は病院のもつ機能を発現し得るか否かにかかわる重大問題である.これは精神病院という施設が持つ住居性などの基本問題とは違った意味で,極めて動的な問題として考えてゆかなければならない.健康人の日常生活における食生活の問題と,精神病院という治療社会での栄養問題はその性質を大きく異にする.しかしそれは等しく栄養指導という手段によってのみ解決される.というのは栄養指導という行為には,あらゆる状態の人を対象とするという特性があるからである.したがって病院の栄養管理もまた栄養指導という一過程を踏むことにより,その目標を達成できると言える.栄養指導は強制的な治療行為をはじめとする種々の管理行為と対照的に,対象者つまり患者に非強制力をもって方向性を与えてゆくものである.
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