今月の本棚
—越山 健二 著—「地域医療のあゆみその実践と研究」
若月 俊一
1
1厚生連佐久総合病院
pp.759
発行日 1978年9月1日
Published Date 1978/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206648
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地域医療との闘いの記録
私は筆者越山院長とは長い間のおつきあいをさせてもらっている.彼はまた,私どもの日本農村医学会の評議員で,その重要なメンバーでもある.地域医療についてはお互いに長い間,理論的にも実践的にもかかわりあってきた仲で,この度,今までの業績をまとめられ『地域医療のあゆみ』を出されたことは私にとっても,たいへんな勉強になった.なにより,筆者の全貌をより広く深くうかがえたことはうれしかった.彼はかつて海軍軍医として空母鳳翔にのりくんでいたという.そして爆撃で負傷した.彼の,日頃のなんとなき毅然たる風格,そして実際に所信を貫き通してきた業績,すべてはそういう生死を越えた彼の経歴に,よい意味で関連している所があることが分った.
ここには,彼の学術論文あり,調査,研究の業績のほか,評論あり,さらに講演,随想までもある.「はしがき」によると,各章は「おおむねその時代の順に」配列されているという.地域医療に関する彼の業績が結集されており,彼の考え方や方法論を知るのに便利である.第1章「地域と疾病」から,第6章「上市厚生病院のあゆみ」に至る論文のうち,とくに昭和42年頃からの,市村潤氏と連名で発表されている近代統計学とコンピュータを使っての,地域医療のシステム化への追究の努力は注目に値しよう.
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