今月の本棚
—「アンリー・デュナン」教育研究所編—「ほづゝのあとに—殉職従軍赤十字看護婦追悼記」
天明 佳臣
1
1川西町立病院
pp.494
発行日 1978年6月1日
Published Date 1978/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206570
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戦時救護の意義を考えさせる手記
戦時救護の手記
『殉職赤十字看護婦追悼記・ほづつのあとに』は,昭和12年の「支那事変」(=日中戦争)から16年の「大東亜戦争」(=太平洋戦争)を経て20年の敗戦に至る間に,各地で戦時救護に挺身した日赤看護婦の方々の手記16編よる成る.
召集令状を手にして,ある人は「来るべきものが来たという感動にむせび泣いた」という.ある人は「赤十字看護婦になった以上一度でよいから戦地勤務をしてみたいと念じていたものですから,かねての願望が達し得るのはこの時とばかり感激で一杯でした」と記している.おそらくほとんどの方が,同じような思いで,勇躍戦地へ出発していったのであろう.多くの庶民は"聖戦"と信じて何の疑いも持たなかったのだ.わたしはたしか昭和20年の春,陸軍幼年学校を受験したいと,両親の前に座った自分の姿を思い出した.
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