精神医療の模索・5 精神衛生法の功罪
実践による改善が可能—功の面から
元吉 功
1
1明治学院大学
pp.332-335
発行日 1978年4月1日
Published Date 1978/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206518
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編集者から私への求めは,標題を主として功の面からまとめてみよ,とのことであるが,それは私がこの法律の成立や昭和40年の大幅改正に,多少関与してきたという理由からかもしれない.しかし今の時点では,罪をあげて批判することは易しく,効用を説くことは難しい.しかしどんな法律も,時代とともに古くなり時勢にそぐわなくなる.進歩の早い医療の分野では特にそうであって,健康保険法などその最たるものであろう.精神衛生法もその例外ではない.昭和51年6月,全国精神衛生センター長会議の席上で,当時の佐分利公衆衛生局長は,法改正を示唆したと伝えられている1).その要旨は,「精神衛生行政の基本となる精神衛生法について,①福祉政策がない,②社会復帰政策に欠けている,③措置入院や患者の行動制限など,社会通念に照らして問題がある,などを考えると,1-2年は乗り切れても,4-5年は乗り切れなくなることが予想される.」というものである.今ここで法改正の問題に触れる余裕はないが,法制定以来28年,40年の大幅改正後すでに13年,その間の社会的,経済的,政治的変動は極めて著しい.そこここにほころびのできたことは当然で,もはや法運用の工夫だけでは繕いきれない面の出てきていることもまた事実である.しかしこの間,この法律が行政や医療面に果たした役割も過少評価すべきではないと思う.
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