特集 老人医療の課題—退院後のケア
寝たきり老人訪問看護の実際と問題点
島田 妙子
1
1東京白十字病院
pp.126-128
発行日 1978年2月1日
Published Date 1978/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206447
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
東京都東村山市が全国に先がけて「寝たきり老人訪問看護指導事業」を制度化したのは昭和46年12月であり,満6年を経過している.東村山市で実施される「寝たきり老人訪問看護指導事業」は当市の老人福祉対策の一環として,予算化し,家族の看護のもとに日常生活の介助を受けながら生活している老人の家庭をその程度に応じて看護婦が訪問して,看護の指導および必要な援助をすることであり,看護婦からの要請があった時には,医師,作業療法士,理学療法士等も訪問して必要な援助を行うことになっている.この事業の実施主体は東村山市であるが,この事業に直接たずさわっている看護婦または看護婦の要請で訪問する医師,作業療法士,理学療法士は,市とこの事業の委託契約をしている社会福祉法人白十字会東京白十字病院から派遣されている.
加齢と共に起る身体的変化・老化現象と,それに加えて病的変化を持つ老人は,その境界の判断はつきがたく,臨床検査的には正常範囲でありながら,身体の自由がきかないために,医学的に治療が必要であるかに錯覚して入院させられたり,退院できない例は少なくない.積極的な医療の必要でない老人に病床が占有されながら,現在の保険医療制度のなかではどうすることもできない.また広く公衆衛生分野で退院後のあるいは入院の必要のない積極的な医療の必要のない老人に対しての日常生活の介護指導や実際的援助または健康管理ができるかというと,これも十分とは言えないように思われる.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.