当直医日誌
国際電報
福井 次矢
1
1聖路加国際病院・内科
pp.57
発行日 1977年12月1日
Published Date 1977/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206400
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6月○日水曜日,晴れ
昨日から62歳のアメリカ人,Mr.Fにかかりっきりである.9か月前にボストンで急性骨髄性白血病と診断され,化学療法により寛解を続けていたが,5日前商用で来日して以来,発熱と右上肢に皮下出血をきたし,ショック状態となって都内のホテルから運ばれてきた.入院時,典型的な敗血症性ショックの症状を呈し,種々の治療にもかかわらず血圧はどうしても80mmHg以上とならない.意識はやや鈍で下痢が続いている.今日一日中,医長のDr.Iがボストンの主治医と連絡をとったり,血小板輸血の準備をしたりで完全に振り回されてしまった.
このような状況でも,当直の時間になると救急受診を求めて容赦なく電話が鳴る.梅雨に入ったせいか急性胃腸炎の症状を訴える者が多い.病棟の仕事で手を離せないことを説明し,来院しても場合によって少し待たなくてはならないことを納得してもらう.学生時代には胃腸炎などという病名を聞いたことはあるにせよ,なんら興味を示して勉強した覚えのない身にとって,臨床の場に来た当初は,最も多く遭遇する病気の一つであることが皮肉に思えたものだ.
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