特集 世界の病院医療の動向
保健補助者および保健チーム
紀伊國 献三
1
1筑波大学
pp.40-42
発行日 1977年9月1日
Published Date 1977/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206325
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
「保健補助者および保健チーム」の問題は世界の国の中で,豊かでない国,いわゆる発展途上国において,いかに医療および保健における公平さと効率性を求めるか,という問題に対する一つの試みである.
国際病院学会の開会式においてノッサル教授が指摘したごとく,現在,急速な医学および関連科学の発展にもかかわらず,実際に地域の住民に提供されている医療との間には大きなギャップがある.それは,発展国の内部におけるギャップでもあるが,地球全体の立場からみるならば,より大きなギャップがあることを認めざるをえないであろう.たとえばノッサル教授は,WHOが現在進めつつあるTDRと呼ぼれる熱帯病の研究および教育のプログラムについて紹介したが,このTDRでとりあげている六つの熱帯地域にある医療問題,すなわちマラリア,住血吸虫,フィラリア,トリパノソーマ,リィーシュマニアおよびらい病の六つの疾患に対して,近代医科学はただの一つの効果的なワクチンも持っていないことからも明らかなように,過去における専門家たちの立てた優先順位は,必ずしも地域の人々の医療に適用されたものではなく,かえってそのギャップを大きくしてきたともいえるかもしれない.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.