一頁評論
小児医療システムの未来像
甲賀 正聰
1
1国家公務員共済組合連合会立川病院小児科
pp.57
発行日 1976年8月1日
Published Date 1976/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205983
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これからの病院は疾病治療だけでなく,地域住民の健康管理と医療を行う包括的なシステムが望まれよう.特に小児科領域ではその必要性が痛感される.
小児の重症疾患は減ってきた.最近10年間の乳児死亡率をみても,昭和40年に出生1,000に対して18.5だったものが,昭和50年には10.7と大きく減少した.ある報告によると,昭和40年に10年後を予想して,はじき出した数字は17.5であったから,実際には予想をはるかに下回ったわけである.今やわが国の乳児死亡率はスウェーデン,オランダに次ぐ世界のトップ・グループである.私どもの小児科での15歳未満の全小児科年齢の年間死亡数もこの10年間で約4分の1に減った.しかも死亡総数の減少だけでなく,年齢別死亡数にも変化がみられ,衛生統計上の新生児期である生後4週までのものが全体の約7割を占めるようになった.言い換えるならば,感染症が激減した今日,幼児以上の小児は悪性腫瘍などのいわゆる難病以外では死亡することがなくなったのである.これらの変化は小児病棟のベッド利用を低下させた.特に年長児のベッド利用率は明らかに減少した.一方,外来部門の年間受診者数は地域人口の増加も手伝ってか,この10年間あまり大きな変化をみていない.結局,入院を必要とする症例は減ってきており,外来で治療できるものが相対的に増えている.
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