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—児玉 隆也 著—「ガン病棟の九十九日」/—荒木 貢 著—「私は狂っていない!—つくられた精神病者」
安藤 昭子
1
1東京女子医科大学病院
pp.62-63
発行日 1976年7月1日
Published Date 1976/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205960
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再読にたえる本
「ガン病棟の九十九日」を私はこれで2回読むことになる.最初は『文藝春秋』(昭和50年6月号)で読んだ.その時も今後何回も読もうと思って雑誌を書棚に納めた.しかしそのままになっていた。今回単行本として出版された「ガン病棟の九十九日」は主題の文章の外に"天使の報われぬ町","イシャとキシャの払いもどし","さるのこしかけ","手記","闘病ノート"など新聞や雑誌に既載の作品がまとめられている.このうち"手記"は未亡人によるものであり,また"闘病ノート"は著者が,がんセンターに入院し,そして退院してから他界1週間前までの生活の記録である.本書によって初めて発表されたものであって,そこにはただ闘病日記だけではなく,新進気鋭のフリー・ライターである著者,児玉隆也氏の根性,恐らく著者にとっては将来の著作になくてはならない資料メモとして書きつづられたにちがいないノートが添えられてあって,これを読むとき,新しい涙に誘われる.いずれにしろ本書の中心は,著者が肺ガン治療のために入院したがんセンターを舞台にして描かれた「ガン病棟の九十九日」であって,他篇もこれと素材も同じくする作品である.したがって私の評も一括してさせていただく.
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