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—William A.Nolen 著 横山 邦幸 訳—「外科医の誕生」/—近藤 廉治 著—「開放病棟」
植村 研一
1
1千葉大医学部,脳神経外科
pp.62-63
発行日 1976年3月1日
Published Date 1976/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205856
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人格豊かな外科医が育つまでの過程描く
医師としての人間性の育成を重視
この本は,米国外科学会の特別会員であり,ミーカー・カウンティー病院の外科主任である著者が,かつてタフト医科大学を卒業して,ニューヨーク市立ベルビュウ病院で1年間のインターンと4年間の外科のレジデントの卒後教育を受けて,一人前の外科医に育った過程が詳しく説明されている.それは,単に外科医に必要な診療技術の修得の過程の説明ではない.患者の心理や社会的境遇,看護婦の心理や立場,他の医師との協調精神,医療制度や病院の運営方針,といったものすべてを配慮しつつ,一人一人の患者に外科医として最も適切な判断を下し,最も適切な処置ができる「人格豊かな外科医」が誕生していく過程が,彼の実際の体験を通してありありと描き出され,読む人の心を打つところに本書の真価がある.
医学部を卒業し医師免許を受けたばかりの「医師」が,患者にとって危険極まりない存在であることは世界共通の事実であり,何科を専攻しようと,立派な臨床医になるためには優れた卒後臨床修練が必要である.日本では多くの場合,大学病院の医局に入局しそこで数年間を過ごすことにより「卒後教育」を受けたことになるが,少数の例外を除き,修練期間,修練内容,修練方法,評価方法を明記したカリキュラムが存在するわけではなく,いつとはなしに診療技術が伝授されている.
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