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—IRVING B.WEINER 著 秋谷たつ子,松島淑恵 共訳—「精神分裂病の心理学」
村松 常雄
1
1前 国立精神衛生研究所
pp.52
発行日 1974年10月1日
Published Date 1974/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205455
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すべての精神科医に開かれた書
心理学者と精神医学専門家との協力研究は,わが国でも大正時代から半世紀余りの歴史を持つ.たとえば内田勇三郎氏のクレペリン・テストの研究も当時の東京府立松沢病院での仕事であった.しかし臨床心理学なる専門領域の専門家であるという資格称号が学会によって定められたのはアメリカのことで,一定の学歴,研究歴と1年以上の臨床経験というかなり高い水準が資格審査受験の基準として求められるようになる,と聞いたのが1950年のことであった.それは,筆者が終戦後における欧米の専門学界視察旅行を終えてアメリカから帰国する直前のことであった.当時英仏などでも,大学精神医学の教室でもある有名な精神病院などには心理学者が研究していたが,たとえばフランスのロピタル・サンタンヌでは心理学者がテスターとしての仕事だけしか与えられず,あまり重視されていないと不満を訴えていた.しかしこれはいずれも今から20年以上も前の話である.
わが国における心理学者の臨床面での活動も,おそらくアメリカの影響もあって戦後著しく活発になってきた.本書の訳者の1人である秋谷君は,筆者が名古屋大学医学部精神医学教室に在職当時,1956年から何年かの間教室の研究員として10人余り集った当時の若い心理学者の1人である.当時教室では,患者に対する諸心理テストの分析による診断と,医師の側での診断との対照,検討なども繰返していた.
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