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—岩佐金次郎著—「精神病院管理の問題点」
川上 武
1
1杉並組合病院
pp.88
発行日 1973年3月1日
Published Date 1973/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204944
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好感のもてる現場からの発言
精神科疾患はいわゆる成人病・老人病(脳卒中・心臓病・悪性腫瘍)とならんで,疾病構造のなかでしめる比重が年々たかまっている.同時に,かつては"不治永患"としてかえりみられなかった精神科疾患が向精神薬の開発により近代医療のレベルにのりはじめるにつれて,精神病院が医療経営として確固たる地歩をしめるにいたった.
しかし,日本の明治維新いらいの医療に関する公共投資を個人(開業医)の営利性に転嫁してきた低医療費政策は精神医療のなかにも貫徹していた.結核病院の斜陽化の声のなかで精神病院の新設がすすめられたわけだが,その主力は民間病院であった.現在では精神病院の80%以上は民間病院であるといわれている.精神科疾患が他の病気より,本質的に社会的性格が強いことを考慮にいれると,これは異常な事態であり,現代日本資本主義の特殊性を示す重大な指標の一つだといえよう.
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