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—日本科学者会議 編—「現代日本の医療問題」(講座・現代人の科学11)/—岩佐金次郎,他 著—「病院精神医学の実際」
上林 茂暢
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1柳原病院内科
pp.62-63
発行日 1976年6月1日
Published Date 1976/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205932
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医学,医療の問題を簡潔に集約
迫られている原則的検討
日本医療はいまや転機をむかえ,将来像の確立を迫られている.医療荒廃の進行は,患者,国民・医療関係者はもちろん国家にとっても,医療費問題を直接の契機としてぬきさしならないものとなってきた.もはや部分的な手直しでは,どうにもならないことは共通の認識といえよう.最近,「医療計画」「保健計画」が議論にのぼりはじめたのも,その現れであろう.
それだけに,日本医療の将来のあるべき姿,根底となる医療観,技術観,医療システムの基盤としての社会との関連で,矛盾の根源をどこに求めるか,変革の主人公は誰かなどのいくつかの原則的検討を欠くことができなくなってきた,同じ言葉を用いても,出発点が違えば内容は全く異質のものとなるにちがいない.この点は,医療危機打開の方向を集約する理念として登場してきた「地域医療」をめぐる動きに明瞭に示されている.矛盾の社会的側面には目をつぶり,テクノロジーのみによって突破をはかろうとするのか.また住民参加とはいえ,住民は国家・企業・エリート研究者の作ったプログラムに従うお客様的な存在にすぎないのか.
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