特集 人の使い方の再点検
人の使い方の再点検
石原 信吾
1
1虎の門病院事務部
pp.23-26
発行日 1971年10月1日
Published Date 1971/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204460
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まえがき
‘そこに山があるから登る’というのはイギリスの登山家ジョージ・マロリーの有名なことばである.ではもし仮に,‘そこに人がいるから使う’というような態度があるとしたら,はたしてどう評価されるであろうか.もちろん,人事管理上の観点からは,そんな安易な態度が是認されるわけはない.
しかし,わが病院界においては,むしろそういった状況のほうが一般的であるとすらいえるような気がする.それには,またあとで考察するように,それなりの理由があるものと思われるが,とにかく,それでよいと言えるはずのないことは確かである.特に,病院は最も典型的な労働集約的経営体であって,人の働きが病院機能の発揮を支える基本的部分をなす.そのために,現在の社会一般の人手不足の影響は,病院に最も深刻に表われてきている.そうした人手不足が,需要供給の関係から大幅な給与の上昇をもたらすのは当然であって,病院の場合医師をはじめとする各専門職種の労働市場が閉鎖的であり,その需要の弾力性がきわめて小さいこととも相まって,最近の給与およびそれに伴う人件費の上昇は特に著しい.そうした面から,現在の病院には,人手倒産,赤字倒産の両面の危機すら予測されるほどである.いや,その危機は一部では既に現実のものとなりつつある様子さえみえる.
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