視座
患者の接遇―常識の再点検
福田 宏明
1
1東海大学整形外科
pp.1323
発行日 1992年12月25日
Published Date 1992/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408900993
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去る3月末で8年間の素人院長役(東海大学医学部付属大磯病院)から解放され,ほっとすると同時に,得難い経験が出来たことを感謝している.今でも時々朝の各科合同医局会で話をする場面を想いおこす.例えば対象が3カ月毎に配属される研修医諸君とする.「頭髪,ひげの手入れを怠らないこと,ネクタイをすること,白衣のボタンをかけること,みがいた靴を履くこと…」.何を今更と思われるむきもあろう.しかし,身だしなみの点検は医療の現場でもなお古くて新しい課題である.身だしなみだけではない.朝夕の挨拶が出来ない,また指導者に対する事例の報告を怠る研修医がいかに多いことか.これらの欠落現象は家庭教育に依るところが大きいと判断せざるを得ず,したがって根も深いが,研修医教育の中の重要な項目と考えられる.
「患者は学客である」という.多くの若い研修医をかかえる大学病院では正に患者から学ぶことが日常的な仕事である.その意味で患者はわれわれの学問上の客人である.その大切な客に対する接遇の実態はどうであろうか.以前より随分良くなったとはいえ,いまだ病んでいる人の方が気を遣って医師との人間関係を構築しようと努力する場面が多いのではないか.医療の基本は,患者と医療者の相互信頼にあり,円満なinformed consentに至る経過がいかに初対面に始まる人間関係に依存するかは贅言を要さない.
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