英国国営医療研究メモ・9
II.国営医療の問題点—E.精神衛生行政理想と現実の溝
姉崎 正平
1
1病院管理研究所
pp.66-67
発行日 1970年9月1日
Published Date 1970/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204077
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わが国で,1970年代は,精神病院告発とともに明けたような感がある.伝えられた不祥事の原因は,採算を無視しえず,営利に走りやすい民間施設が,低医療費政策のわく内で,精神障害における大幅な医療費の公的負担と強制入院の制度を乱用したことであろう.
英国では,医療も施設も国営ないしは公営であるから,政府は理想的な計画を立て,それを実施できそうに考えられる.しかし,実際には,それがためにかえって,計画のための現実分析や将来の予測に甘さがあったり,計画実施上の財政的,人的その他の制約を忘れたり,計画に具体性が欠けている場合が起こる.精神衛生行政は,理想を描き,計画を立てても,予算の配分,定員の割り当てで有利な扱いを受けがたい分野である.そのため,英国の精神衛生行政には,いろいろな問題点が指摘され,Ely病院事件*をはじめ,幾つかの不祥事件が報告されている.
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