英国国営医療研究メモ・8
II.国営医療の問題点—D.医師不足とその対策
姉崎 正平
1
1病院管理研究所
pp.66-67
発行日 1970年8月1日
Published Date 1970/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204046
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英国でも医師不足が叫ばれている.その形態や原因は,英国の特殊条件を反映している面が多い.すなわち,英国人医師が,英語を常用語とし,自由診療を基調とするアメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドなどの先進国へ移住する.他方,それを補うようにインド・パキスタンをはじめ,アフリカ・中近東・アジアの主として英国の旧植民地から英国の病院助手医の職へ医師が流入している,英国人医師の海外流出が,国営医療に対する不満の現われとの主張があり,有色人医師の流入が人種差別問題と結びつきやすい.
これら英国の旧植民地帝国としての条件のほかに,国営医療という点から,中央での政策が全国的に浸透,固定化しやすい.これは長所にも短所にもなる.1957年,Willink委員会による医学生の定員減勧告は,医師の需給関係の予測を誤っていたにもかかわらず,実施され,医師不足を招いた.しかし,逆に1968年,王立委員会により出された‘医学教育に関する勧告’に示された医学教育の改善案など,政府が承認すれば,医学部を含め医療機関が国営であるため,徹底した実施を期しやすいであろう.
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