特集 地域の活性化に病院は貢献するか
地域需要の創造と病院マーケティング
上原 征彦
1
1明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科
pp.203-207
発行日 2007年3月1日
Published Date 2007/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100290
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私は,産業構造審議会のサービス部会の部会長として,これからのサービス分野の発展について記した中間報告を取り纏める作業をしたが,その時,医療・健康分野に関わるビジネスが重点分野の1つに挙げられていた.編集部がこれに注目して私に原稿依頼してきた経緯を踏まえると,おそらく,本稿での私に期待されていることは,「医療・健康分野等に需要創出・拡大の目はあるのかどうか,産業経済発展において病院にどんなことが期待されるか」という問いへの答えであろうと思われる.私は,こういう時,病院に限らず,あらゆる分野においてこのままでは需要創出・拡大は無理だ,と答えることにしている.現代のような成熟社会にあっては,儲けようとする行動を起こしたとしても,よほどの手を打たない限り,直ちに過剰供給の波に晒されることも多く,また潜在需要の顕在化も困難だからである.
上記で「よほどの手を打たない限り」と述べたが,それではどんな手を打つべきか.この手こそがマーケティングである.マーケティングとは,単なる販売の拡大を意味するものではなく,組織が生き抜く場を見つけ,その場における需要適合の方法を築こうとする考え方に基づいて展開される科学である,ということを認識すべきであろう.本稿では,最新の理論を踏まえつつ,地域需要を創造していくために病院のマーケティングはどうあるべきか,ということに焦点を当てた議論を展開してみよう.
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