特集 新生児室の管理
新生児室の院内感染
吉岡 和之
1
1賛育会病院産婦人科
pp.47-51
発行日 1968年3月1日
Published Date 1968/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203304
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はじめに
近年における抗生物質療法の進歩は,まことにめざましく,感染症の治療は以前とは比較にならぬほど,容易となり,このため一時は感染症は,あたかも征服されてしまったかのごとく考えられたのであるが,耐性菌の出現によって,再び感染症の治療は新しい観点から考えなおさなくてはならなくなった。ことに,これらの耐性菌は病院などの閉鎖環境で,しかも抗生物質を使用する機会の多い場所で出現するため,いわゆる院内感染の問題が大きくクローズアップされてきたのである。
一方,新生児ことに未熟児は感染症に対する抵抗がいちじるしく弱く,最近の新生児死亡原因の調査でも15.2〜18.6%という高率を占め,死亡原因の第2位にある現状である。欧米の新生児死亡の剖検例の報告でも9741例中1384例は感染症によるもので,ことに成熟児死因の18.4%を示している。したがって,これらの新生児を収容する新生児室においては,院内感染は非常に重要な問題であり,これを防止することは病院管理上,最も大切なことの一つであると考えられる。
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