病院の広場
看護の課題
湯槙 ます
1
1日本看護協会
pp.16-17
発行日 1966年1月1日
Published Date 1966/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202754
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年があらたまるということを基準にものを考える習慣はあまりないのだが,年頭所感を求められてみると,やはり年のはじめには特別の気分というものがあるようだ。たとえば看護制度の問題などでは,予算編成の時期の直後であるだけに,念願が果たされそうにない現実に長嘆息をつくことが多かったこの幾年かではあるが,それでも「やはり少しずつは動いてきているのだ」と気をとり直すことのできるのは,お正月のもつおおらかな雰囲気のせいかも知れない。
さて,昨年度は私にとっては大きな動きのある年であった。11年間の東大生活に別れをつげ,その間の1つの夢でもあった,「教育の場と臨床の場との有機的なつながりの中で看護を実践する」という願いを実現させる機会を得て新しい職場に着任した。そして毎日の業務がまことに具体的であるのに今さらのごとく感心した。その中にいると,まるで世界の動きとはまったく関係のないところに閉じ込められたかのような感じさえ持つ。時として,これまでただひたすらに求めてきた「看護」とはまったく縁のない世界であるかのような錯覚に陥ったりもする。しかしこのような概念の先行の中で,やはり若いエネルギーにふれ,この人たちの願いや夢をつぶさないように,伸ばせるようにするには何が必要なのか考えさせられている。
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