新春特集号 年頭所感
広く世界の大勢の中で
橋本 寛敏
1,2
1日本病院協会
2聖路加国際病院
pp.19-20
発行日 1965年1月1日
Published Date 1965/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202491
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迎える新しい年は終戦後20年めに当たる。日本が亡びるかと思った年も,すでに二昔の過去と遠くなった。世界もすでに大きく変わりつつある。冷戦を続けて世界の国々を脅かしていた二大国も政変によって新しい時代を迎えようとしている。中国がむりをして原爆実験をしたとて,世界の新しい脅威となるかどうかは未知数である。世界大戦が終わって20年ともなると,どの国が勝ったのか,どの国が負けたのかわからなくなった。まったく新しい時代にはいるような気がする。
昨年は90に近い国々からいろいろの人種の選手を迎えてオリンピック競技を催し,皮膚の色を忘れて,交歓親睦の機会をつくり,世界がひとつであるという理念を興揚して,世界平和に寄与することが甚大であった。これは,正しく世界の大国のひとつである貫録を示したことであって,これから私どもが進むべき道を企画するにも,それにふさわしい心の態度をもつべきであって,終戦後窮乏の極に達した時のような,その日限りのまに合わせの方策に執着すべきでない。遠大なる計画を目指して,堅実な前進を図るべきではないか。
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