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現代フランス皮膚科学の大勢(Ⅰ)
肥田野 信
1
1東京大学皮膚科教室
pp.333-336
発行日 1956年5月1日
Published Date 1956/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201690
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1.序論
医学就中皮膚科におけるフランス学派の位遺は極めて特殊な上,我が国では甚だ親しみが少く,かつイギリスのRecent Advances of DermatologyやMac Kenna著Modern trends in Dermatology(1,2輯),ドイツのミユヘン学派におけるFortschritt der Praktischen Dermatologie und Venereologie(Springer,第1輯1952,第2輯1955)の如き展望に便利な本がフランスには無いので,こゝにフランス皮膚科学の現在に於ける大勢を御紹介することはあながち無益ではないと思う。
およそ一国の医学を語るのに,その医療制度,就中病院組織や教育制度を知らずに過すことは許されないであろう。しかし,その事はフランスに於て余りにも特殊で,我が国との比較が困難を極め,著者の知る所も多くなく,本文の範囲を遙かに逸脱するので遺憾乍ら,こゝでは省略せざるをえない。たゞ数語,医藥の完全分業,あらゆる地位をうる為の競争試験制度,そしてフランス医学が開業医を基礎にして打立てられていることに注意しよう。つまり大部分の医師,大学教授に至るまでが午前中は病院に出ても午後は必ず私宅で診療をする訳で,これがフランス医学をあくまで臨牀に結びつけ,ある点では策縛さえもしている最大の理由である。
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