新春に当たって
オリンピクに備えて受入れ態勢の充実を
橋本 寛敏
1
1聖路加国際病院
pp.17
発行日 1964年1月1日
Published Date 1964/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202266
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東京で世界オリンピック大会が開かれる待望の1964年がついに到来した。ここ数年,何もかもオリンピックを目指して動いてきたようなふうにもみえた。東京市街いたるところ土木工事が進行中で,危くて安心して通れない道路が多く,こんなことでは大会に間に合うだろうかとあやぶまれるほどの混乱ぶりである。立派なホテルは至るところに建った。こんなに工事をした投資が果たしてオリンピックで取り返されるだろうか。それほど多くの外国人が来て日本に金を落としてくれるだろうか。おそらく取らぬ狸の皮算用は当てがはずれ,負債を片づけるに苦しい数年が続くだろう。しかし,一獲千金の夢は破れるだろうが,結局は良いことをしたことになる。オリンピックを機として東京の都市としての文化水準が向上し,やっと都市らしい東京になるのだから,長い眼でみれば損ではない。
しかも,これは東京ばかりでない。地方の市街も著しく改善され,産業日本がさらに観光日本として発展する有様は,確かに目覚ましい。しかし不思議なことには,医療機関については,誰も何も言わない。かつて明治の末期に万国博覧会を東京に誘致する企てがあったが,その時には外国から来る客に健康上の不安を覚えさせないために,第一に良い病院を建てることを計画した。先年小型のオリンピックがアジア大会として開催された際にも,医療について準備委員会で案を練った。
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