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綜合病院における未熟児室のあり方
山内 逸郎
1
1国立岡山病院
pp.7-11
発行日 1958年1月1日
Published Date 1958/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201306
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産科と小児科,この二つの異つた領域の間にあつて,不幸にして何等なすことなく放置されていた小さな「いのち」——未熟児に対しても,最近になつてようやく近代医学の温い手がさしのべられ様としている。何故今迄この様に長い間,この未熟児が産科医からも,小児科医からも見放された存在であつたのであろう。まことに不思議な話であるが,野放しになつていたのは実は未熟児ばかりではなかつた。すべての新生児が産科医からも小児科医からも,ほとんど「医学的な取扱い」はうけていなかつたといつても過言でない。加うるに,さらに重要な事実は,この新生児期こそは小児のあらゆる年令層を通じて,もつとも死亡率の高い時期である。驚くなかれ,満一年未満の死亡の半分は,一ケ月未満の死亡で占められている。この人世の長いあゆみの道中で,もつとも危険なこの時期--新生児期こそは,もつとも注意深く医者に見守られてしかるべきであつた。もしこの新生児達に物いう口をあたえたら,さぞ声を大にして産科医と小児科医の怠慢を責めたてたことであろう。勿論我々として返す言葉もないが—何故かくも重要な新生児期が不幸にして真空地帯になつていたか。その理由は簡単である。産婦人科という科はあるが,産小児科という科はなかつたからである。言葉をかえていえば,勿論赤ん坊は産科医の手でこの世に生をうける。生れた児は産科医の監督下にある母親の近くにおかれる。
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