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病院の外来患者診療—眼でみる病院の設備とはたらき(11)
橋本 寛敏
,
滝野 賢一
pp.21-42
発行日 1955年1月1日
Published Date 1955/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200912
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まえがき
病院の本業は入院患者を診療するにあるが,どこの病院でも相当数の外来患者が診療を求めて来院し,小売商店よりもデパートに客が集まるのと同じような現象が見られる。個人開業医は重症で自分の手におえない患者は病院に送り込まなければならないが,歩いて通える患者が病院に蝟集するのに対して反感を懐き,大病院は外来診療をやめよと極言するものさえある。
しかし近代医学の進歩が病院外来を繁昌させる結果となつたことを理解すべきである。合理的な医療に必要な診療設備が整つて居ることが病院の魅力である。これは個人開業医では到底望み得ないことであつて,近年の医術の進歩がますますこの差異を著しくした。それで米国などでも以前は大病院には救急患者を取扱う外来部はあつても,一般の外来診療部のない病院があり,又それがあつてもあまり繁昌しなかつたが,近年は日本と同じように外来患者が増す一方であつて,外来診療部を増設,新設する病院もある。大病院の外来は長く待たせることと,人情味が足りないのが個人の診療所に較べて劣る点であるが,それにも拘らず,大病院の外来が繁昌するのは人情主義よりも合理主義に傾く現代人の心理の反映であつて,まことに興味深い。
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