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診療設備の中央化(その一)—眼でみる病院の設備とはたらき(5)
橋本 寬敏
,
滝野 賢一
pp.17-31
発行日 1954年7月1日
Published Date 1954/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200835
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まえがき
わが国の病院は,独逸の臨床医学が分化専門化して長足の進歩を遂げた時代にそれを新らしい型式として採り入れて発達したのであるから,専門科が各々分立し,妍を競つて今日に至つたので,病院の診療設備も内科,外科,産婦人科,小見科その他の専門科が別々に自分の設備をもつて,それを自分だけが自由に用いるように成つて居る
しかし過去半世紀の間に時勢は大きく変遷して今日は分化した専門科が協力して綜合の力を発揮する一つの有機体を形成して働くのを原則とする時代となつた。それで病院の建物も各科が分立しないで,一つの大きい建物の内にすべての専門科が入つて相互の協力を便にするのを原則とする。そうなれば,給水,暖房,配電なども一元化するのは勿論のこと,診療設備も各科共通のものは成るべく一ケ所に集めて,同じ設備を各科が利用するように成る。これは設備と人員の重複を避け,経済的の無駄をはぶくことを重視する計画である。医学の進歩は日増,高価な設備を要求するので,極力重複を避けなければならない。診療設備の中央化は各科の診療活動の自由を或る程度,束縛するので各専門科の医療職員の側には,不平があり得る。しかし病院経営の責任をもつ管理者の側から観れば,ここの制度は経済的の無駄をはぶき,また協力診療を促進する制度であるからこれは是非とも実現させなければならない。診療に関与する職員すべてがこの制度の意義をよく理解すればこれを実現することは決して困難ではない。
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