--------------------
Dr. Shimanouchi's Recordtape
島内 武文
pp.55-57
発行日 1954年11月1日
Published Date 1954/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200892
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
頭のある生物
生物でミミズの様にはつきりした頭のないものから,人間の様に頭ができてきたという事実は,考えてみるとなかなか面白い。
脊椎動物に於て大脳の大部分を切りとつても生物は可なりの生活現象をつづけて,一般的の栄養循環等や低級の神経機能はおかされない。脳は複雑な連想記憶比較選択想像等の作用のための部分と考えられ,全般の統制と対外的経験的機能の集中とみられる。眼耳鼻舌等重要な対外情報機関もここに集中している。即ち脊椎動物ではその体部に生体の維持に関する機能があるに対して,頭方には主として統制的対外活動的の機能と,独立的精神的機能とが集中している。殊に鳥類に於ては,その運動様式からして空間的指南力の規準としての頭都の機能を発達させるために,長い頸部を以て頭部を支えて,体部の運動の影響のなるべく少い様になつてきた。気づかぬ人もあるが鳥類は体部の方向姿勢に関係なく,その頭部を正しく保つ習性があり,地上を歩行する際にも通常体部が進行する間頭部は旧位置に止まり,体部が止つた時に頭部を別に前方にうごかすのであり,鳥類独得の歩き方を示している。
Copyright © 1954, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.