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あとがき
K
pp.64
発行日 1954年9月1日
Published Date 1954/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200871
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打続く天候異変もどうやら立直つて土用を過ぎて漸く本格的な夏がやつて来た。それ迄が極端に凉しかつただけに,いきなり鰻上りに上昇した水銀柱の圧力に直ちに順応することは生理的に困難であつたが,憂慮きれた農作物もお蔭でかなり生返つたようだし,お百姓のみならず凡ての人々が一応愁眉を開いた恰好である。健康者にとつては夏というものは失張り暑い方がぴつたりくる。冷雨でジメジメされるより,炎天下を一日の勤めから帰つて浴びる行水の味は又一入というものだ。食糧が増産できれば昨今の黄変米騒ぎの様な妙な問題も起らずに済むという訳である。併し,病床に横わる人々にとつてはこの暑さは決して樂ではあるまい。日本脳炎患者が昨年の十数倍に達している。又過日は結核患者の炎天下の坐りこみで悲惨な犠牲者を出している。病める人々の社会復帰えの道程がもつと樂にできるように,そして又病気を生活の手段として利用しなくとも済むように吾々の周囲には手をうつべき余りにも多くの問題が横わつている。
本誌7月号の石原氏の論文に関連して,院長の側からベテラン橋本先生に院長の在り方を論じて頂いた。新旧乃至東西の思想が交錯する現下の我が国情に於て,院長論は病院管理学上の大きな命題の一つである。いつかは爼上にのせらるべき問題であつたのであるから,この機会にとり上げて充分討議して貰いたいと思う。
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