特集 ITの活用とこれからの医療
医療におけるプライバシーマネジメント
山本 隆一
1
1東京大学大学院医学系研究科医療経営政策学講座
キーワード:
プライバシーマネジメント
,
個人情報保護法
,
電子化診療情報
Keyword:
プライバシーマネジメント
,
個人情報保護法
,
電子化診療情報
pp.446-450
発行日 2014年6月1日
Published Date 2014/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102796
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2005年4月にわが国で個人情報保護法1~3)が全面施行された.しかしリスボン宣言4)を引用するまでもなく,個人情報保護法とは無関係に,以前から医療現場ではプライバシーには相当の関心を持たれてきた.個人情報保護法は苦情の申し立てを制度化したが,消費者庁の調べでは保健医療分野での個人情報保護に関する苦情は他分野に比べて著しく少なく,厚生労働大臣が措置を行った事例も極めて少数で,もともと医療機関や医療従事者が患者のプライバシーに関心が高かったことを示している.しかし問題がないとは言えない.2つの点を考慮する必要がある.1つはプライバシーという人権の概念そのものが流動的であることであり,もう1つは医療の情報化の急速な進展である.プライバシーという人権は19世紀末に登場した.つまり生成後100年余りの新しい概念であり,さらに,現在に至るまでその概念は変化を続けている.そのため現在でも確たる概念を全ての人が共有している状況とは言えない.また医療機関での情報の取り扱い方も大きく変化しつつある.電子カルテに象徴される診療情報の電子化が進められており,旧来の直感的に管理可能であった紙やフィルムから医療従事者にとって直感的に把握しがたい電子情報の管理に責任を持たざるを得なくなっている.さらに近年は情報連携が積極的に進められ,単純に一機関で利用していた従来に比べて利活用が活発化し複雑化している.その結果としてプライバシー権の保護のためには,より組織的に取り組むことが重要になる一方で,制度の見直しも必要になっている.
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