連載 リレーエッセイ 医療の現場から
コクランレビューが日常診療の場で果たす役割
森 臨太郎
1
1国立成育医療研究センター
pp.831
発行日 2013年10月1日
Published Date 2013/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102644
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2013年はコクラン共同計画が設立されて20周年を迎える.ドイツ流の実験医学とは異なる実証的な医学の母国英国において,コクラン共同計画は臨床試験の登録制度を基盤に「1つの診療の課題に関して,研究の結果を網羅的に検索し,その中で質の高い(より確かな)情報のみ残し,それを統計学的にまとめる」という系統的レビュー(コクランレビュー)を生み出すことにより,医療のみならず,様々な分野にも応用されることで,意思決定の形を大きく変えた.一方,日本ではこのコクランレビューが紹介されてから10年以上経つが,こういった科学的根拠(エビデンス)に基づく医療に関しては,いまだ誤解が多く存在する.
臨床試験(ランダム化比較試験)は,ある診療行為の効果を示すのは得意だが,安全面の証明は不得意である.系統的レビューは多くの場合,ある診療行為の効果について検証するため臨床試験が主体となるが,安全面についての系統的レビューは,異なる手法が必要である.このため,臨床試験を主体とする系統的レビューの結果のみでは,意思決定を下すことはできない.
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