連載 鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・69
家族が側を離れた時
鉄郎
1
1NPO法人アットホームホスピス
pp.492-493
発行日 2013年6月1日
Published Date 2013/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102553
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あるがん患者さん.彼は病院での治療を終えて退院したが,その後もがんは進行し,町のクリニックが自宅での緩和ケアを担当することになった.患者さんは医者嫌いだったのだが,そのクリニックの医者は根っからの明るい人で,静かにしんみりと話すのではなく,診察の時は常にワッハッハと笑いが飛び交う.患者さんも彼のことが気に入ったようで,以前よりもよく笑うようになり,訪問日を楽しみにするようになった.
ある訪問日のこと.いつもは看護師や理学療法士など誰かが一緒なのだが,その日は医者1人だった.いつもの通りに様子を聞き,処置をして,世間話をした.ところが,家族が部屋を離れた時,あたりを見回した患者さんが,近くに来いと医者を呼んだ.医者が何事かと側に行くと,患者さんは声のトーンを落として,こうつぶやいた.
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