連載 医療管理会計学入門・8
価値企画の登場と普及―提供プロセスマネジメントとしての管理会計①
荒井 耕
1
1一橋大学大学院商学研究科
pp.916-919
発行日 2012年11月1日
Published Date 2012/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102399
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原価企画とは,トヨタ自動車が1960年代に独自開発した戦略的原価管理方式であり,「製品の量産体制以前の源流管理,企画・設計段階における原価の作り込み活動」である1).当初は原価低減活動により目標利益の達成を図るものであったが,今日では原価低減だけでなく,顧客ニーズを捉え,多様な製品コンセプトを考え出し,さらに収益・原価の両面を見ながら目標利益の達成案を探索するもの,つまり総合的利益管理活動と認識されるようになっている.日本会計研究学会では「製品の企画・開発にあたって,顧客ニーズに適合する品質・価格・信頼性・納期等の目標を設定し,上流から下流までのすべての活動を対象としてそれらの目標の同時的な達成を図る,総合的利益管理活動」2)と定義している.
この定義は,原価企画がトヨタ自動車に端を発していることもあり製造業を想定しているが,医療(病院)においても,前提条件(提供プロセスの標準化,知識共有化,事前計画化)が満たされれば,医療サービスの提供以前,つまり設計・開発段階において,「医療の質」「収支」「安全性」「在院日数」等を同時に考慮し,費用対成果としての価値の向上を図ることができる.特にDPCが進む急性期入院領域においては,すでに病院経営上必要になっていると言えよう.
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