連載 医療管理会計学入門・2
設備機器投資の経済性計算―戦略遂行マネジメントとしての管理会計①
荒井 耕
1
1一橋大学大学院商学研究科
pp.402-405
発行日 2012年5月1日
Published Date 2012/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102269
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■設備機器投資の経済性計算の重要性
事業を継続して経営していくために,どのような組織においても一般的に中長期経営計画(事業計画)が策定され,そこに反映された組織の戦略を実現する一環として,設備機器(以下,機器等)投資計画が策定される.機器等投資計画の策定に際して,機器等投資案ごとの長期的採算性を計算し,経済性の観点からその優劣を比較することで,優先順位や採否を決定することを,機器等投資の経済性計算と呼ぶ.機器等への投資は中長期的に病院(法人)経営に大きな影響をもたらすため,合理的な意思決定が極めて重要である.したがって,機器等投資の経済性計算は,戦略的な病院経営に不可欠な管理会計手法と言える.
機器等投資の意思決定は投資プロジェクトごとの計算であるため,会計期間と関わらせる必要は必ずしもなく,期間計算を適切に行うための収益・費用による計算(発生主義会計)である必要はない.また,機器等投資の結果は通常,将来の長期間にわたるため,資金(現金)の時間価値を考慮する必要がある.そのため資金の出入りのタイミングが重要であり,したがってキャッシュフロー(資金の出入り注1))ベースで計算が行われる.すなわち,機器等投資の経済性計算は,キャッシュフローベースで時間価値を考慮して実施することが,理論的には適切である.なお,機器等投資の意思決定に際しては,独立投資と従属投資の区分が重要である.ある投資案の採択が別の投資案の採否に影響を与えない場合,その2つの投資案は独立投資案であるが,相互に影響し合う場合(どちらか1つしか採択できない相互排他的投資など)には,従属投資である.
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